インドの3つのテーマが教えてくれる事

 

インドが向かう未来とは?

ワングローブ・カンファレンス 2016に参加して

ワングローブ・カンファレンス(One Globe Conference)は、2012年より、デリーのインペリアルホテルにおいて毎年2日間にわたって開催されています。そこでは、インド大臣クラスの政府関係者や地方政治家をはじめ、教育・産業界のオピニオンリーダー、NPO/NGO、海外からのゲストスピーカーなどが一堂に会してそれぞれの知識を共有し、インド及び南アジアにおける21世紀のナレッジ・エコノミー(知識経済)の在り方を討議されています。
日本とインド間の架け橋となるコンサルティング事業を展開するムーンライトウェイヴ株式会社の代表、望月奈津子は、今年2月に開催された同カンファレンスに参加し、そこで交わされる熱い議論を目の当たりにしてきました。ここでは、そこで得た情報を皆様と共有したいと思います。

1ワングローブ・カンファレンス 2016の会場となったデリーのインペリアルホテル。

 

3つのテーマ

2014年に樹立された現行のナレンドラ・モディ政権は、「デジタル・インディア」(コミュニケーションや社会インフラのデジタル化)、「メイク・イン・インディア」(製品の国産化、および世界の製造基地化)、「スマート・シティ」(インテリジェントな街づくり)という3つのテーマを掲げてインドの改革を進めています。ワングローブ・カンファレンスでは昨年もこの3つの軸に沿った議論が展開され、今年も引き続きこれらをベースとしつつ、テクノロジーやイノベーション、スキルデベロップメント(職能開発)、地域ごとのコラボレーションが教育と結びついて、どのような社会の変化がもたらされるかが討議されました。
また、若い起業家たちが鍵を握る「スタートアップ・インディア」の動きも注目されており、カンファレンス後に視察したムンバイのスタートアップや、カンファレンスも通じて、インドの躍動を肌で感じました。

 

教育とヘルスケアの重要性

ナレッジ・エコノミーを推進するための最重要課題として挙げられたのは、教育(小学校と高等教育の双方)とヘルスケアです。どちらの分野も、テクノロジーとの親和性が高く、それによって大きく改革される可能性が秘められています。

今回のカンファレンスには、日本から文部科学省上級顧問(カンファレンス開催当時)の山中伸一氏もパネラーとして参加され、日印間の教育交流をより活発化していく必要性を強調されていました。現在、インドからアメリカへは13万人もの学生が留学していますが、日本へは700人台に留まっていて、その差は歴然です。このような状態では、日印両国の次世代を担う人たちが、お互いの文化や知識を深く理解することが難しくなる可能性が高く、何らかの対策が強く求められています。

4文科省上級顧問の山中伸一氏が参加されたセッションでは、ケンブリッジ大学、シカゴ大学、香港大学からのパネラーとともに、21世紀に相応しい高等教育の在り方についての討議がなされた。
同時に、インドの人材育成面の弱さを指摘する声もあり、理想的なナレッジ・エコノミーを確立するためにも、この分野の改善が急務とされました。

というのは、事業規模が大きなウェイトを占める大量生産型の経済から、イノベーションが基盤となるナレッジ・エコノミー体制に移行するためには、短期的な利益よりも企業や社会の長期的な発展や成長が重要となります。つまり、優秀な人材を育てながら顧客との信頼関係を築き、有用な知識を社内に蓄積していくことが大切です。

2オープニングセッションで挨拶をする、インド政府情報・放送大臣のRajyavardhan Singh Rathore氏。ナレッジ・エコノミーの実現には、メディアの有効利用も大きな役割を果たす。

 
改めて考えてみると、このような企業のあり方は、本来、日本が得意としてきたものといえます。最近では、欧米流の経営手法がもてはやされる傾向も見られますが、これからのインドに日本が貢献できる部分として、日本流経営の良さとメリットを伝えていくことも必要と思いました。

 

民主主義の二面性と大きな希望

経済面では、過去25年でインドのGDPは2750億ドルから2兆ドルにまで拡大しているものの、国の規模を考えた場合の理想の成長率との間には、まだ隔たりが存在するとワングローブ・カンファレンスのパネラーは考えています。
その根底には、インドでは民主主義に基づく合意形成を重視する傾向が村落レベルから強く根付いていることがあり、これは中央政府の決定が絶対的な意味を持つ中国とは異なるインドの良い側面といえますが、行政による意思決定に時間がかかるというマイナス要因ともなるわけです。
このことはインドのような多面性を持つ国家では避けられないないと捉える向きもありますが、「デジタル・インディア」、「メイク・イン・インディア」、「スマート・シティ」の改革を着実に進めていけば、インドの経済力はこれまでにないスピード感で成長していくとの期待感が強くなっています。

32日間で15あまりのセッションが行われ、「デジタル・インディア」、「メイク・イン・インディア」、「スマート・シティ」の3つのテーマに沿った熱い議論が繰り広げられた。

 
ワングローブ・カンファレンスの主催者代表で、パネラーの1人でもあったサルワン・メディアCEOのHarjiv Singh氏は、すでにインドのモバイル回線の契約数が10億を超えていることに言及し、それをベースとした直接的なコミュニケーションやEコマースの活発化も、これまでにない成長に貢献することを指摘しました。
もちろん、世界的な経済の停滞傾向の影響はインドにも及んでいますが、巨大な国内市場を持つことが、特に「メイク・イン・インディア」関連のプロジェクトに有利に働き、投資家を惹きつけていくと見られています。
そうしたインフラの整備がなされれば、毎年7%前後で推移している現在のインドの経済成長率がさらに慎重し、「世界の工場」としての存在感を増していくことでしょう。
また、ブレグジットによって、英国との関係性も活発になることが予測され、教育という視点、またそれ以外でもインドの躍進が促進されるのではないでしょうか。今後、ますますインドから目が離せません。

5左から、ワングローブ・カンファレンスの主催者サルワン・メディアCEOのHarjiv Singh氏、地方分権化の推進を提唱するカナダのフォーラム・オブ・フェデレーションズ上級顧問のDalbir Singh氏、文科省上級顧問(当時)の山中伸一氏、ムーンライトウェイヴ(株)代表の望月奈津子。